見えないことから目を逸らさない。
その先に見えるものがあるから。
『みえるか企画』代表
細川 亮さん
見えづらくなった先に、出会いがありました。
細川亮さんは、佐賀市を拠点に、講演やイベント企画、出版活動などを行っています。細川さんは、東京で働いていた当時、日常の中で視界に違和感を覚え、緑内障と診断されました。視野が少しずつ狭まっていく過程で、不安や悲しみを抱えながらも「自分を否定するのをやめよう」と思えるようになったのは、周囲の人たちとの関係があったからこそです。
たとえば2024年のローカリストである写真家・刑部さんとの出会いも、転機となりました。刑部さんの「見えない人がつくる本っておもしろい」というひと言から、書籍『みえるか vol.1』を発行。あえて誤字脱字をそのまま掲載し、見えづらい自分がつくった“リアル”を表現することで、「完璧でなくてもいい、みんながありのままの自分自身を受け入れられる社会になってほしい」というメッセージが込められています。『みえるかvol.1』の制作は細川さん自身が他者との関わりを深く見つめ直す機会になったそうです。
「あなたのままで、ここにいていい」ことを伝えたい
細川さんの人生に欠かせないのが、パートナーである“准ちゃん”の存在です。「本当は、何にもしなくても生きていけるんです。制度だってあるし、困ったら誰かが助けてくれる。でも、僕が活動しているのは、『どんな亮君も大好きだよ。信じてるからね』と常に見守ってくれている彼女が僕にくれるような”温かさ”を、みんなと”味わいたい”と思っているからなんです」
受け入れてもらえたという実感は原動力となり、講演やワークショップ、書籍の発行といった多彩な活動へと広がっていきました。見えないことをきっかけに、人や地域とつながる手段を模索し続ける日々。細川さんの歩みは、静かに、しかし確かに、誰かのための場を生み出し続けています。「自分に生まれてよかったと心から言える社会を」。細川さんの言葉には、まっすぐな願いが込められています。
PROFILE
細川 亮(ほそかわ りょう)
佐賀市在住。東京で生活していた頃に、緑内障と診断され、後天的に視覚障がいを持つようになる。以降、佐賀に移住後は「見えづらさ」をきっかけに、人と人、人と地域をつなぐ活動を展開。講演やワークショップ、『みえるかマガジン』の発行を通じて、ありのままの自分でいられる社会を目指す。ローカリストの一人として、“JOKER”的な立場での盛り上げを目指している。
LOCALIST(ローカリスト)は、佐賀県内で精力的に地域づくり活動に取り組んでいる方で、若い世代の方々にお願いしています。