陶芸は未来を作ることに似ている。「今を生みだす点と円」
- 2021.07.31
- written by 山本 卓

先日、脊振町にある陶房石にお邪魔して焼き物体験会を見学させていただいた。
私は、幕末に建った古民家の片隅にある工房で、ヒグラシの鳴き声を聞きながら物思いにふけっていた。
「陶芸は、未来を作ることに似ているのかも」と。

クルクルと回るろくろに乗せられた無機質な土の塊に、少しずつ少しずつ、手のひら、手の指で力を加えると、それは作品へと変化する。
無機質な土の塊が命を宿したその瞬間、胸がキュッと締め付けられた。
「あれ? 自分と同じなのかもしれない」
闇雲にろくろを回して作り始めても作ることはできない。
「お皿を作りたい」、「コップを作りたい」と具体的にイメージすることが重要だ。さらにいえば、そのお皿を使って何の料理を載せたいのか、誰と食べたいのかなど……。
具体的なイメージが手のひらや指先に伝わり、回転するろくろの土の塊に伝わり、作品が生まれていく。

「将来なんて、なんとかなるでしょ?!」って漠然と日々を過ごす人と、「こんな自分になりたい」と日々頑張っている人とでは、数か月後、いや数年後、作られる将来の自分の姿・形は全然違うのだ。自分が将来どう変わりたいのかイメージすることの大切さを焼き物体験で教わった気がする。
体験教室に来ていた方が「ろくろは点と円の感覚が難しい」と言っていた。2年前移住を決意し、佐賀のお山に来た。地域おこし協力隊として活動を続けてきた。私も移住当時は、漠然と「何とかなるかな」と思っていた。けれど、なんともならない。移住すれば自分を変えられるという考え方は間違っていたのだ。この先自分がどうなっていくかなんて、タイムトラベラーでもないので知ることはできない。移住当時の私は、ただの「点」でしかなかった。
だから、イメージした。
「笑いが絶えない山の暮らしにしたい」
時間というろくろの回転の中で、地域のみなさまという手で支えてもらいながら、ご縁という「円」が少しづつ大きくなり、無機質な土の私に命が宿り、毎日が楽しく笑いが絶えない「今」が生まれた。
……。協力隊も残り約8か月。
「こんなお山になったらいいな」、「こんな自分になりたいな」とイメージをし、夢を語り、動いてみる。その点のイメージ力が円になり、進みたい未来の形ができ始めている。
僕は「笑い」というイメージの焼き物=未来を作り続けていきたい。(笑)
陶芸体験は自分の今を考えさせられる良い時間となった。

今この記事を読んでくださっている方で「陶芸をしたい」方は、脊振町にある陶房石を訪ねてみてください。ろくろの体験をしながら自分と向き合う時間がそこにあります。そしてイメージを膨らませてみてください。
「この土で何を作りたいか。」
そして作品が出来上がった瞬間、自分の中で生まれる「何か」を感じてください。


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<取材記者>
山本 卓
「佐賀のお山の100のしごと」記者/地域の編集者(地域おこし協力隊)
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<取材記者>
山本 卓「佐賀のお山の100のしごと」記者/地域の編集者(地域おこし協力隊)
大阪府高槻市出身。10代のころから役者を志す。夢を叶えてCMや大河ドラマをはじめ映画や舞台で活動。劇団「ブラックロック」の主宰を経て、海外公演を自主企画で成功させる。その後、キー局情報番組のディレクターとして番組制作に携わる。夢は日本を動かした100人になること! 地域の人に密着した動画作成や、人の顔が見えるマップを作りたくて移住を決意

