自然のものは自然のままに。野菜を育てることは「子育て」に似ている?
- 2020.08.27
- written by 山本 卓

野菜を育てること、特に夏野菜を育てるのは本当に手間がかかります。家庭菜園を楽しんでいる方が「なぜ夏野菜を作るのか?」というと、手間がかかる楽しさがあるからだそうです。僕も野菜を育ててみてわかりました。
どうも地域の編集者のすぐポン太です。
シェアハウス前の畑で夏野菜を育てている僕の日課といえば、毎朝、野菜たちに話しかけること。
「おはよう。いいね! 今日も元気だ」
すくすくと育つ夏野菜たちは本当にかわいい。しかし、そんなかわいらしい夏野菜の中でもミニトマトに異変が起こった。青空に向かって大きく背伸びするはずのミニトマトの苗が一向に大きくならないのだ。そればかりか、少し黒味がかり、頭を垂れている。元気がない。
「どうしたの? ミニトマトちゃん!」
ミニトマトを救え! 走り回った日々。

すっかり元気のないミニトマトの苗たち。それはまるで、仕事で疲れ、満員電車に揺られながら「あぁ今日もコンビニ弁当か」って帰宅をするサラリーマンのようだ。
インターネットで『ミニトマト 病気 元気がない』と、検索してみる。
……。いろんな情報があるが、原因がよくわからない。膝から崩れ落ち、ミニトマトを抱きしめることしかできない。不甲斐ない。三瀬の畑の中心で叫んだ。
「誰か助けてください‼」話題になったあの映画のワンシーンのように。
日に日に弱っていくミニトマト。いてもたってもいられず、地域の農家さんに相談に行く。
「すみません。うちのミニトマトが大変なんです!」
焦る気持ちを落ち着かせながら
「何か足りないんでしょうか? 水ですか? 栄養ですか?」と尋ねる。
しかし、農家さんにみてもらっても、原因が定まらない。
考えられる原因としては
① 畑の栄養不足? → これに関しては堆肥を撒いて土を作ったので違う。
② 栄養の多量摂取? → 苗を植えて数日しか経っていないことから、そこまで影響がでるとは考えづらい。
③ 何かしらの病気? → 隣に植えている野菜の苗には影響が今のところないことから、これも違う。
④ 水のやりすぎ? → ここ数日、まとまった雨が降ったわけでもない。トマトに水をやりすぎるのもNGだと聞いていたので、あげていない。
どれも当てはまるものがない、打つ手なし!
ガビーーーーーン。(泣)
自然のものは自然のままに。
ミニトマトは生命力が強く栽培しやすい野菜だそうです。本来自然のものは自然のままに育てるほうがよい。こういう状態の時、農家さんは決まって同じことを言います。
「そのまま見届けるか、新しい苗を買って植え直すことをお勧めするよ」
新しい苗を買うか? ミニトマト本来の生命力に望みをかけ見届けるか? 苦渋の選択を強いられている。そして僕は、ミニトマト本来の生命力にかける選択をしました。
それからというもの、毎朝毎夕、畑に出ては、ミニトマトの前に座り込み話しかける日々。
「がんばれ! 負けんな! 大丈夫だからな」
その姿を見ていた農家仲間は、僕にこう言った。
「すぐるはたぶん、親になったら過保護になるんだろうな。そんなことじゃ子どもは育たないよ」
僕が親になったら過保護になるのか? 子どもは育たない?
野菜を育てることは子育てに似ているのか? ……。想像してみた。
「パパァー抱っこして」と抱き着いてくる娘が、可愛いすぎて溺愛している僕は、娘の成長を写真に撮り、仕事中も眺めてしまう日々。月日は流れ、娘も高校生。「彼氏ができた?! ダメだ。お前はいくつだと思っているんだ。」と娘に怒鳴ってしまう。娘は家を飛び出して帰ってこなかった。その2日後、突然警察からの電話。娘との久しぶりの再会に何を話していいのかわからない僕は「どうして家に帰ってこないんだ」と聞く。すると、娘はこう言った。「……。ウザいんだよ」
はい! 嫌われました。最悪の結果でした。(笑)
農家さん曰く、自然に育つ植物だからこそ、自然に任せて成長を見届けてあげることが重要なのだと。種から育てる場合、根が出るまでは手をかける。しかし畑に植えた後は基本的に放任主義だという。追肥をしたり支柱を立てたりはするが、過保護になりすぎてしまうと逆にダメになることが多いそうだ。
野菜を育てることは子育てをすることに似ていると思います。子どもの成長と共に親も子育てを勉強する。喜びながら、悩みながら、手をかけ愛情を注ぐ。
「お前も親になればわかるよ」
高校時代から仲がいい友達に赤ちゃんが生まれた時に言われた言葉。今は少しわかるような気がします。
生まれたばかりの赤ちゃんは愛おしく、神々しくもある。
無垢な瞳で興味津々に見つめられると、その眼差しに、スーッと吸い込まれていく感覚を覚える。
その瞳を見ているとついつい過保護になってしまうのが親心。
まさに野菜を思う気持ちとそっくりだ。
その後ミニトマトがどうなったか気になりますか? 今では房にたくさんの実をつけて甘いミニトマトを毎朝収穫して食べています。

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<取材記者>
山本 卓
「佐賀のお山の100のしごと」記者/地域の編集者(地域おこし協力隊)
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<取材記者>
山本 卓「佐賀のお山の100のしごと」記者/地域の編集者(地域おこし協力隊)
大阪府高槻市出身。10代のころから役者を志す。夢を叶えてCMや大河ドラマをはじめ映画や舞台で活動。劇団「ブラックロック」の主宰を経て、海外公演を自主企画で成功させる。その後、キー局情報番組のディレクターとして番組制作に携わる。夢は日本を動かした100人になること! 地域の人に密着した動画作成や、人の顔が見えるマップを作りたくて移住を決意

