自分のために癒しの時間を。緑と光あふれる美容室 Lumino No.023 秋田ルミさん
- 2021.02.28
- written by 鵜飼 優子

「髪が切りたい」
定期的に出てくる感情。単に髪が伸びたから切りたいというのもあるけどそれだけじゃなく、気持ちを切り替えたい、癒されたいなど……気持ちの面で美容室へ行きたくなります。
佐賀のお山にお引っ越ししてまず気になったのが、どこへ髪きりにいこう? でした。
そんなときに出会ったのが佐賀市松梅地区にある「美容室Lumino」さん。

お山のなかにポンと現れる赤い屋根の白いお家。とっても可愛いたたずまいにわくわくしながら、中へ。すらっとした綺麗な女性が迎えてくださいました。
Luminoのオーナーの秋田ルミさんです。
2016年11月8日にオープンされて5年目を迎えられています。窓から見える緑と柔らかい光あふれる美容室で、カットとヘッドスパをしていただきました。
席に案内され最初に自分でアロマの香りを選びます。5~6種類くらいから香りをかいで、その時の気分のぴんとくる香りを。迷っていると、「ゆっくり選んでくださいね。そのときの自分に必要な香りを皆さん選ばれますよ」と声をかけていただき、もう一度香りをかいで、さわやかな香りのアロマをチョイスしました。

施術を受け終わったあと、すっきりしたのはもちろん、心がじわ~とあたたかくなり、元気になりましたとお伝えすると「自分のために時間を使ったっていう喜びで元気になりますよね。そのお手伝いができるのが美容室のお仕事です」と。
たっぷり癒されて、ほくほくした気持ちで家に帰りました。
後日改めて、Luminoのオーナー秋田ルミさんへお話をうかがいました。
わざわざ通いたくなるお店にしたい

今日はよろしくお願いします。店内に光がいっぱい入って、緑も見えてすごくいい空間ですね。
そうですね。ここは元々、大工をしている夫の資材置き場だったんです。木蓮の大木があって、綺麗なんですよ。光もたくさん入るよう設計士さんが設計してくださっていて。
お店を作るとき、自分のお家にお客様を招くような形にしたくて。気を使わず、緑と光あふれるこの空間で癒されてもらえたらと思っています。
カットとパーマ、ヘッドスパまで全部マンツーマンでわたしがします。
だけど、場所選び悩みましたよ。
そうなんですか。
ここで美容室を開いてお客さんがわざわざきてくれるかなって。最初は佐賀市内の街中でずっと物件探してました。だけど、どこも空き店舗がなくて。しかも美容室って街中はけっこう飽和状態で。美容室どうし隣にあったりして。
お店をつくる何年も前のことだったけど、テレビで熊本の山の上にある美容室されてあって、そこの方が「わざわざ行きたくなるお店にしたいんです」っておしゃっていたのが心に響いて。それがずっと頭に残っていたんですよね。
そんなときに、家から今のLuminoが今ある場所を眺めてると、ふっと閃いて。気がついたら店のイメージをデッサンしていました。

閃いたあと、夫にも話して、夫のお義父さんにも話してもらい、ここに建てることになりました。
わざわざきてくれるお店ってすてきですね。
建てている最中も「ここですると?!」って言われたりしましたよ。でもわざわざここに来てもらうんよって。力強く言ってました。不安な気持ちも無かったとは言えませんけどね。
新型コロナウイルスで世の中が変わって、うちだと町に出るわけじゃないし、ほかのお客さんとも会わないから、安心して来れるし、帰るときにすっきりしたと言っていただくこともあって。お山に美容室を開いてよかったなと思います。
医療事務から飛び込んだ美容室の世界

凛としたルミさん。「紆余曲折を経て、お店をオープンするまで長かったですよ」と笑いながらおっしゃいました。
もともと美容師を目指されていたのですか?
いえ、はじめは医療事務をしていました。
その時、体を壊したんですよ。ストレスが溜まって。気分転換で美容室へ行ったら、担当の美容師さんが楽しそうに働かれていて。「仕事楽しいですか?」って聞いたんですよね。そしたら「楽しいね」って。
「あたし美容師したかったんですよね」って言ったら、「したかったってひとは多いもんね」って、「したらいいじゃん」って言われました。その言葉に影響受けて、21歳の誕生日の日、美容学校の入校締め切り最後の日に願書を出しにいきました。
その2週間後に仕事辞めて、きっかけとなった美容室へ履歴書をもっていきました。
すごい、行動力ですね!! そこからルミさんの美容師人生が始まったんですね。
あの時は勢いでしたね。担当してくれていた美容師さんには、ほんとに来たねって驚かれながらも、その方が店長さんだったので、面接していただきその美容室で働くことになりました。

働くと決まった途端、店長さんに「一緒に地獄みようね」って言われて、え。楽しいって言ってたのにって、冗談かなと思いました。(笑)
楽しいわくわく感からの地獄。実際はどうだったんですか?
美容師へ転職して1日目。事務と違って、ずっと立ち仕事ですっごい足が痛くて。靴を変えんといかんと思って、仕事終わったらすぐ店を出て、靴を買いに行きました。
そしたら次の日「なんで帰ったと?練習は?」って言われましたね。
うわ、地獄だわって。その日から定時で帰ることなかったですね。仕事が終われば、練習。その生活の中で美容学校へ通いながら、仕事をして。資格は最後、通信で取りました。
働きながら、学校も通ってハードな生活ですよね。お客さんの対応ができるまでひたすら練習ですか?
そうですね。ただ私が美容室へ入ったとき、たくさん同期が入ったんですよね。新卒の子もいたし、主婦の方もいて。なので、歓迎会があったり、新人の練習プログラムを組んでもらえたりして、一人じゃないから乗り越えられたのはありますね。
練習も日々の業務も学校も一生懸命頑張って、資格を取ったあとすぐお客さんの相手ができるようになりました。割と早かったですね。

ルミさんの努力の積み重ねですね。
ん~葛藤はありましたよ。採用してくださった店長が独立されて、その時に仲良くしてもらってた先輩が引き抜きでお店を離れたりいったり、別れがけっこうありました。
そんな中でも、残ったら見える景色ってなんだろうって思って、踏ん張りましたね。
そのお店のあとに独立されたんですか?
いいえ、まだなんです。
お店には約7年いました。結婚と同時に退職して、そのときはもう美容師やらないって思ってました。
再び戻った美容師の世界と独立開業までの道のり
憧れて入った美容師の世界。働きながら、資格を取り、出会い別れを繰り返しながら着実に美容師としてステップアップしていったルミさん。そこからご結婚をされ、もう戻らないと一度は決めた美容師業界へ戻り、独立されるまでの道のりはどうだったのでしょう。

結婚して子どもが産まれ、子育てをしていて。お店であれだけの人と関わっていたのが急に関わらなくなって、喋らない赤ちゃんと過ごしていて、ふと気づいたら犬と喋っていたんですね。
外の世界との関わりがなくなって。
1人で子育てしていると孤独になるって聞きますね。
ある時、夫が髪を切りに行く床屋さんに一緒についていったんです。そこで「あんたは外に出らんといかんよ」って。「隣の美容室が求人募集してるよ」って言われて。
美容師せんと思っていたんですけど、わたしにできることは美容師だって改めて思って。
そしてこの先やるんだったら自分のお店を持ちたいって決めた上で「1年しかいないかもしれないけどいいですか?」って聞いて、パートで雇ってもらいました。
でもそこからが長かったんです。(笑)

そこでまた美容師として戻って、どのくらいいらっしゃったんですか?
辞めるときにびっくりしたんですけど、12年いたんです!
同僚の出産、育休があったり、自分のタイミングもあって、辞める時期を逃していましたね。
12年パートで勤めていたのですが、子どもたちも大きくなって、もっと働きたい、お客様への関わりはこうしたいという思いが出てきました。
12年お勤めされて、その間に独立の準備をされたんですか?
そうですね。このままおしり決めないと辞められないなって思って、誰にも言わず開業セミナーに通いました。誰も背中押してくれないから自分で動かんとって。お店を出したい気持ちが日に日に強くなりました。
美容師って独立する方多いんですけど、やっぱりお店に勤めているうちに自分だったこうしたいなって気持ちが出てくるんですよね。

なるほど。やっぱりオーナーさんによってお店のカラーって違うんですね。
やっぱりカラーがそれぞれ違いますね。
私はずっと居場所を作りたいって思っていて、お店を持っておくと遊びに来やすいじゃないですか。誰かが寄ってくれるし、いつまでも人と関わりたくて。
やっと見つけたお山の土地で自然に囲まれた美容室Luminoがオープン

勤めていた美容室での経験を活かし、独立してお店がオープン。大工である夫と佐賀市の建築士さんと組んで作られたお店は光がたくさん入り、癒しの空間に。
できたときはどうでしたか?
やっとできたって、嬉しかったですね。実は、4月に合わせてオープンしたいって思っていたんですけど、動き出してから1年かかって、ほっとした部分もあります。
夫はこだわりたいのに、わたしが急かすし、今までで一番大変だったって言ってました(笑)
そうだったんですね。周りの皆さんの反応はいかがでしたか?
Luminoができて、元々のお客さんはもちろん、近所の方も来てくださるようになりました。
近所の方が1人来てくれてから、あっという間に口コミで宣伝してくださって。
近所の方との新たな繋がりもできたんですね。来られる年齢層はどんな感じですか?
新たにご近所さんとも繋がれてよかったです!
年齢層は、自分と同世代の40代、50代が多いですかね。だけど一番上の方が90代の方で電動カートに乗って来てくれて、一番下の子だと1歳ですかね。お母さんの膝にのせて切らせてもらっています。

色んな年代の方の癒しの場所になっているのですね。これからはどんなイメージでしょうか?
ありがたいことに毎月お客様にきていただいているので、引き続き癒しの空間を提供したいと思います。自分自身お店を始めてからはなかなか休むってことができなかったのですが、最近はお客様に休まなきゃってお声をいただき、自分の時間を作るようにしました。
自分自身も癒されながら、お客さんと関わりたいですね。
あとは、Lumino前の土地が空いていて、珈琲屋さんとかできたりしたらいいなって思っていて、松梅のこのあたりにお店屋さんができて、楽しい雰囲気になったら嬉しいですね。
これからもこのお山の癒しの空間に癒されにきたいと思います。本日はありがとうございました。
ー 編集後記 ー
凛と美しいイメージのルミさん。お話すると転職から始まった美容師人生、独立までの道のり決して平たんではない道のりをしっかり歩んでこられたからこその今のルミさんがあられるのを感じました。
40歳後半で初めてバッティングセンターに行ったんですよと笑顔で話してくださり、凛とした中にあるルミさんのチャーミングさに魅了されました。
Luminoでカットとヘッドスパをしてもらい、頭も心も癒され、すっきりしてやる気もみなぎりました。定期的に訪れたくなります。
皆さんもぜひお山の美容室を訪れて、ルミさんに癒されてみてくださいね。


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<お世話になった取材先>
美容室Lumino
秋田ルミさん
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<お世話になった取材先>
美容室Lumino秋田ルミさん
富士町鎌原出身。学校を卒業し、医療事務の仕事に就く。その後、憧れていた美容師の世界へ飛び込む。美容師学校へ行きながら美容室で勤め、修行を積む。結婚とともに退職し、一度は美容師を離れるものの、再び美容師へ戻る。そこでさらに経験を積み、2016年11月念願だったお店Luminoをオープン。緑と光の入るお店で癒しを提供している。




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<取材記者>
鵜飼 優子
「佐賀のお山の100のしごと」記者/地域の編集者(地域おこし協力隊)
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<取材記者>
鵜飼 優子「佐賀のお山の100のしごと」記者/地域の編集者(地域おこし協力隊)
大阪府高槻市出身、ひつじ年。今まで暮らしたことのある地域は、北軽井沢、阿武、萩、佐伯、そして個人的にもご縁を感じている佐賀のお山にやってきました。幼稚園教諭やドーナツ屋さんなど様々なことにチャレンジしています。将来は、こどもとお母さん、家族が集える場所を作ることが目標。佐賀のお山の暮らしを楽しみながら情報発信しています。

